イントロダクション
多くの国が再生可能エネルギーの使用を拡大し続けております。それに伴い電気代も高騰しています。イタリアを例にとると、数年前に非原子力利用の推進が始まって以来、現在では国の電力の40%以上が再生可能エネルギーで賄われております。その結果、その発電コストは高水準に留まっています。国際エネルギー機関(IEA)が発表した情報によると、イタリアの産業用電気料金は世界で最も高い国として指定されております。
このような高価なエネルギー価格により、イタリアの製造業者は工場のエネルギーコストを効果的に削減する対応を模索しております。幸いなことに、産業用の「モノのインターネット」(IIoT)」は、より少ないコストでより多くのことを実現するのに役立つ可能性があります。エネルギー消費データとスーパーバイザ制御、そしてデータ収集(SCADA)を実現させるゲートウェイデバイスを使用して、製造メーカー側は、エネルギーの生成を改善し、消費コストの削減を実現した管理効率が求められます。そこでアドバンテックは、工場のエネルギー監視管理のための高度に統合されたソリューションを提供します。これによりシステムインテグレーター側では、完全な通信プロトコル対応したオープンで柔軟なプラットフォームを通じて、下位層の取得と上位層の統合を簡単に完了し、エネルギー監視システムを迅速に開発できます。
システム要件
Net Surfing社は、企業の資産管理とIoTソリューションの提供に特化したイタリアのシステムインテグレーターです。同社は長年にわたり、多くの製造企業へ効率的な資産管理とエネルギー管理の最適化を実現できる支援を行ってきました。最近、Net Surfing社は世界的に有名なアイウェア(眼鏡)メーカーから、イタリアの主要工場1箇所およびサブ工場5箇所からのエネルギー監視システムの導入を依頼されました。まず、主要工場にデータセンターを設置。そして主要とサブの合計6箇所の工場にわたるエネルギー消費データ(電気、ガス、水道)を主要工場内のデータセンターに集約して一括に監視したいとのご要望でした。また、セキュリティ面でも不安があったため、プライベートクラウドに接続するためのVPN(Virtual Private Network)も依頼しました。
このアイウェアメーカーのニーズに応えるため、Net Surfing社ではCMMS(Computerized Maintenance Management System)を構築し、I4.0 Supervisorと呼ばれるエネルギー監視システムの自社開発も計画していたため、ゲートウェイとSCADAソフトウェアを購入する必要がありました。関連製品は以下の条件を満たす必要がありした。
- Modbusプロトコル対応。データを収集してアップロードするためのイーサネット接続の提供。
- VPN対応。サブファクトリーが安全なチャネルを介してデータセンターにデータ送信る仕組み。
- ネットワークの中断によるデータの損失が回避できるローカルサイトへの一時的なデータストレージ提供。
- いつでもデバイスを接続して追加できる十分なI/Oタグ。
- データ収集とCMMSとの統合を簡単にする柔軟でオープンな開発プラットフォーム。
- ユーザー側がいつでも監視できるようにするモバイルデバイスの対応。
システム詳細
このプロジェクトでは、アドバンテックが産業用通信ゲートウェイ:「ECU-1051TL」とプロトコル変換ソフトウェア:「WISE-Edgelink」、そしてリモート監視ソフトウェア:「WebAccess/SCADA」など、迅速かつ容易に構築・拡張できる分散型ソリューションを提供しました。データセンターに設置された「WebAccess/SCADA」ソフトウェアは、可視化(みえる化)されたエネルギー消費データをコンピュータ上に表示し、管理者がリアルタイムで監視できるようにします。管理者がデータセンターを離れても、携帯電話やタブレットからデータを取得することができます。「WISE-EdgeLink」はさまざまな通信プロトコル(Modbus、IEC 60870-104、DNP3、BACnet、OPC UA)に対応しているため、「ECU-1051TL」が基盤となる機器データを簡単に収集し、安全にシステムへアップロードできます。今回はModbusを介して電気メータからのデータを取得するだけでしたが、将来的に他の通信プロトコルを使用する新しい機械や設備を追加した場合でも、「ECU-1051TL」を介して直接データを取得することが可能となります。運用プロセスは次の通り。6つの工場に「ECU-1051TL」をそれぞれ設置し、EthernetやRS-485を介して計測機器や電気メータ、センサからデータを取得。6つのうち遠隔地となる5つサブ工場はWAN/VPN経由でデータセンターにデータをアップロードし、のこり1つの主要工場はLAN TCP/IP経由でデータを送信する。2000個のI/Oタグ(電気メーター500個分のデータ収集に相当)を用意することで、不足分を気にすることなく、プロジェクトに合わせたデータ収集の展開が容易になります。データ前処理機能では、プロトコル変換だけでなく、データの暗号化も行い、データ送信のセキュリティも強化しています。
実装されたアドバンテック製品
- WebAccess/SCADA:ブラウザベースの HMI/SCADA ソフトウェア
- ECU-1051TL:インテリジェントなプロトコル変換ソフトウェア「WISE-EdgeLink」を搭載したIIoTアプリケーション向けの産業用通信ゲートウェイ
システム構成図
結論
製造業にとって、製造コストのコントロールは常に課題です。製造業が高い収益性を維持し、市場競争力を高めていくには、エネルギー消費量の削減は間違いなくコストコントロールに必要な手段の一つです。かつては、メーカーは電気代の請求書を受け取って期日通りに支払っていたが、どの機器が電力を消費していたのか十分に把握できていませんでした。そして、エネルギーを節約したいと思っても、どこから手を付ければいいのかわからないサイクルに陥っていたのです。現在、アドバンテックが提供した費用対効果の高いソリューションにより、システムインテグレーター側が効率的な方法でプロジェクト開発を完了できるほか、工場がエネルギー監視システムを使用することで、エネルギー管理の状態を細部まで可視化そして見渡すことができております。このプロジェクトに携わった前述したイタリアの大手アイウェアメーカーは、さらに詳細な分析のためにシステムを有効に活用していました。工場内のいくつかのラインを最適化し、性能の悪い機器を入れ替えることで、数ヶ月でエネルギーコストが10%~15%の削減に成功しました。もちろん、このような明らかな実装結果は、ユーザー側からも高く評価されております。