イントロダクション
自動運転車(※ドライバーレス/セルフドライブ/ロボットカー)は、人の操作なしで環境を感知しながら走行できる自動車です。次世代のモビリティを実現するため、中国の有名な自律走行車技術企業の某クライアントが車載体験を再定義するため、自律走行技術を搭載した車両開発を模索しておりました。
そのため同社は、正確な環境センシングに対応したソリューション開発に協力を依頼するため、アドバンテックに連絡を取りました。自動運転車のハードウェアコンポーネントは、外界との検出と相互作用を可能にする人体の部品に似ています。環境センサは、自動運転車が環境に関する生の情報を取り込むことを可能にするコンポーネントです。周囲の状況を分析し理解するためには、環境センサは高性能なマシンビジョン技術とインテリジェントなハードウェアに支えられていなければなりません。
システム要件
このクライアントは、自動運転車による環境センシングを可能にするために必要な複雑なデータ処理を実行するため、信頼性の高い高性能なシステムを求めていました。環境センシングのためのリアルタイムの視覚データを処理するため、IPカメラに伴うレイテンシーの問題(400~500ms)を回避し、優れた画像解像度を実現するため、ビジョン入力用にデジタル SDI カメラを選択しました。しかし、デジタル SDI カメラを使用すると、車載システムで処理しなければならないメタデータが発生します。そのため、高性能グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)を内蔵し、外部レーダーと接続するためのUSB I/Oを4~8個搭載したコンパクトで堅牢なシステムが求められていました。また、設置や操作を簡単にするため、低レイテンシーのマルチチャンネル(最大8チャンネル)のビデオ処理用キャプチャカード、車載通信用のフィールドバスプロトコルの対応と開発を簡単にする「ユーザーフレンドリー」なソフトウェア開発キット(SDK)も必要とされました。
システム詳細
自動運転車による環境センシングを可能にするために、4~8台のSDIカメラを車両に搭載し、正確な検出を可能にしました。大量のセンシングデータを処理するため、第7世代インテル® Core™ i LGA1151プロセッサとQ170/H110チップセットを搭載したアドバンテックのコンパクトでファンレスなモジュール化システム『MIC-7700Q』を導入しました。SDIカメラからリアルタイムのビデオデータを収集し、最小のレイテンシーで30fps(フレームレート)のフルHD 1920×1080pixel ビデオデータをシステムに送信するためのDVP-7640Eビデオキャプチャカードが含まれています。MIC-7700Qシステムに搭載された高性能なTesla P4 GPUカードにより、受信したビデオデータを効果的に処理できます。GPUカードを統合するため、MIC-7700Qシステムは拡張スロットを2基、PCIe x16 x1、PCIe x4 x1、2.5インチHDD/SSDベイ2基を備えたMIC-75S20 i-Moduleシャーシという拡張機能を追加しました。
処理が完了すると、データは車両の自律走行を可能にするため、さまざまな車載システムへと送信されます。車載通信を簡単にするため、MIC-7700QはアドバンテックのiDoor技術の搭載、、CANバスI/Oの拡張、エンジン制御ユニット(ECU)、各種慣性計測ユニット(IMU)、そして更なる車自体が意思決定を可能にする先進運転支援システム(ADAS)との接続も対応しております。最大8台のUSB I/Oを備えたMIC-7700Qは、3Dライダセンサ、GPSモジュール、オドメーター、エマージェンシーブレーキなどの外部デバイスとの接続も可能です。さらに、ソフトウェア開発を簡単にするため、アドバンテックはビジョンキャプチャアプリケーションに向けた複数のカードのスタッキングにも対応させる使いやすいSDKも提供しています。
実装されたアドバンテック製品
- MIC-7700Q:第7世代インテル® Core™ iプロセッサ、Q170/H110チップセット、RS-232/422/485×2、2.5インチHDD×1、CFast×1、mSATA×1、SIMカードスロット付 miniPCIe×1 を搭載・AI推論向けコンパクトデスクトップシステム
- MIC-75S20:PCIe x16 x1、PCIe x4 x1、2.5インチHDD/SSDベイ搭載・2スロット拡張i-Module
- DVP-7640HE:SDK搭載 8-ch SDI H.264 PCIe ビデオキャプチャカード
- SKY-TESLA-P4(※2019年2月に終息):Tesla P4 推論アクセラレータ
システム構成図
結論
アドバンテックのMIC-7700Qシステムは、ビジョンキャプチャや環境センシングアプリケーションに対応した安定性の高いコンピューティングプラットフォームを提供します。柔軟に拡張できる複数のI/Oを装備させ、コンパクトかつ堅牢にした設計は、車載環境に対する簡単な導入および信頼性の高い動作を保証します。DVP-7640HEビデオキャプチャカードは、包括的なセンシングとビデオ解析のため、最大8つの入力チャンネルからのリアルタイムビデオキャプチャに対応します。第7世代インテル® Core™ i プロセッサを内蔵し、複雑なデータ処理に適した高性能コンピューティングも実現します。アドバンテックのMIC-75S20 iModule と iDoor技術を兼ね備えることで、リアルタイムの車載通信用GPUカードとCANバスI/O拡張も対応できます。最後に、複数の言語をサポートするユーザーフレンドリーなオープンアーキテクチャSDKの追加提供により、開発者側にとって特定の使用要件に応じた独自のソフトウェアやアプリケーションを迅速かつ簡単に開発する事ができます。