プロジェクト概要
太陽光発電は現在、再生可能エネルギーの主流となっており、多くの産業が二酸化炭素排出量を削減し、環境の持続可能性を促進するためのインテリジェントデザインプロセスに取り組んでおります。
このような相乗効果は、一部では国立台湾科技大学の楊錦懷教授により、建設部門にて達成されています。楊教授は、太陽電池モジュールとヒートミラーガラスで構成された独創的な建築材料である断熱ソーラーガラス(HISG)の開発でチームを率いていおります。
HISGは、光を通し、発電・断熱・保温が可能なガラスで、自力で発電し、空調の使用エネルギーを削減することができます。この省エネ効果は世界的にも注目されており、楊教授のチームは、ドバイの展示施設でその実施効果と実現性を検証し、その結果を踏まえて空港への設置を決定しました。また、実験の進捗状況を把握するために、いつでもどこでも現場の様子が見られるモニタリングシステムを導入しました。 この監視システムは、アドバンテックのハードウェアおよびソフトウェア製品の大規模なポートフォリオを活用したシステムインテグレータ:「Intelligent Cloud Plus(以下ICP)」社によって構想され、タイムリーに実現されました。このシステムは、「モノのインターネット(IoT)」とプライベートクラウドを組み合わせたもので、楊教授のチームは、地上に誰も配置させることなく、集中的な方法で実験を管理することに成功しました。最終的には、彼らの発明がドバイの空港ビルにおけるエネルギー消費を大幅に削減する事に成功しました。
プロジェクト要件
自動化技術における40年の専門知識を持つICP社は、環境制御、製造、エネルギー管理の分野でスマートなソリューションの提供に専念しております。同社はドバイに拠点を置く子会社も運営しているのでUAE国内にも精通しており、ワンストップで顧客にサービスを提供できました。これらの強みのおかげで、同社は楊教授のチームに採用され、遠隔監視システムの設計を担当しました。 空港建設を担当した業者は、HISGのテストを実施するため約半年程度の期間が与えられました。HISGは、従来のガラスと比較して、光の透過性、発電量、熱の遮断効果などを検証するため、展示設備を2箇所(HISGを搭載した設備と単層ガラスを搭載した設備)建設しました。ICP社側では、実験の忙しさに追いつくよう、比較結果をリアルタイムで可視化できるモニタリングシステムを立ち上げたほか、夏場の気温が45℃にもなるような気候の中で、システムが正常に機能することを確認しなければなりませんでした。 このためアドバンテックは、地上のデバイスが互いに接続し、データを取得し、通信プロトコルを変換し、大量のデータを処理し、クラウド管理を行うことができるようにするための包括的なソリューションを提供する仕組み作りを要求されました。内容は、大まかに言って、次のようなものを網羅していました。
- 台湾で手軽に利用できるプライベートクラウドを作るためのPaaS(Platform as a Service)。
- 二次開発プロセスを迅速に進められる、学習しやすく使いやすいプログラミングツール。
- ドバイの砂漠気候の猛暑に耐えられる堅牢で耐久性のあるハードウェアデバイス。
プロジェクト詳細
アドバンテックは、ICP社に対し、リモートモニタリングシステムを設計する専用のソフトウェアとハードウェアのソリューションを提供しました:
- WISE-4010:IoTイーサネットI/Oモジュール
- ECU-1251:産業用通信ゲートウェイ
- ECU-4784:パワーオートメーションコンピュータ
- HPC-7242:産業用サーバ
- WISE-PaaSおよびWISE-PaaS/WISE.M+:IoTプラットフォーム
- WebAccess/SCADA:ブラウザベースのグラフィックス制御プログラム。
WISE-4010とECU-1251は、台湾の研究者がドバイのディスプレイ設備を遠隔監視するために使用されています。WISE-4010とECU-1251は両方のディスプレイ施設で動作し、前者はガラス表面温度、環境温度・湿度、電力使用量(電力計)、空調運転(赤外線トランスミッター)などのデータを収集し、後者はこれらのデータを前処理しました。このデータはECU-4784(屋外の電気ボックスに設置)に送られ、コンピュータが対応したIEC61850プロトコルのフォーマットへと変換し、4Gネットワークを介して台湾側に設置したHPC-7242サーバに送信されました。データはICP社がWISE-PaaSとWISE-PaaS/WISE.M+上に構築したプライベートクラウド上にリアルタイムで表示させました。 モニタリングシステムに使用されているI/Oモジュール、コンピュータ、サーバなどのハードウェア機器は堅牢で、それぞれが広い温度範囲で正常に動作しました。ECU-4784は、外気温45℃という通常の夏の暑さよりも数℃高い電気ボックス内での作業にもかかわらず、受信したデータを効率的に変換して配信することができました。変電所用に設計され、IEC 61850-3やIEEE 1613規格認証に準拠されたコンピュータは、通常の機種よりも外乱や振動、衝撃に強いことが証明されています。 監視(モニタリング)システムでは、2つのソフトウェアプログラムを使用しました。クラウドレベルではWISE-PaaS/EnSaaSとWISE-PaaS/WISE.M+、エッジレベルではWebAccess/SCADAを別々に導入しました。これらを組み合わせることで、システムのシームレスな「エンド・ツー・クラウド」の統合を実現しました。どちらもダッシュボードのようなユーザーインターフェースを提供し、Sler側は下位層にてデバイス全機器からデータを表示させます。IPC社は、監視システムの立ち上げに時間を要しておりましたが、アドバンテックのクラウドプラットフォーム上での設定やオブジェクトのドラッグ&ドロップによる簡単なプログラミング環境の設定プロセスを簡素化するために、このインターフェースに依存していました。これにより、IPC社は、カスタマイズされたアプローチを採用することで、システム開発の第二段階を予想よりも早く完了させました。アドバンテックが提供するソフトウェア・プログラムは、システムの設計にかかった全体の時間を半分に短縮できました。
Webベースのプログラミング環境により、通常のブラウザからログインし、データの確認やコマンドの実行などをオンラインで行うことができ、遠隔監視(リモートモニタリング)がより簡単になりました。十分なインターネット環境があれば、ドバイのディスプレイ設備から送られてくるデータを閲覧し、現地の環境条件に合わせて設備の空調温度を調整することもできます。 IPC社は、WISE-PaaSとWISE-PaaS/WISE.M+の高いスケーラビリティを活用しました。HISG(断熱ソーラーガラス)がドバイの空港で実用化された今、IPC社は既存のクラウドにWISE-PaaSとWISE-PaaS/WISE.M+が提供するアプリやツールを追加して改良を加えました。例えば、監視システムには、WISE-PaaS/EdgeLink(プロトコル変換プログラム)やWISE-PaaS/WISE.M+(リアルタイム管理のためのIoTプラットフォーム)を搭載し、消費電力や環境制御を行う機器を組み込みました。これにより、より徹底した機器監視が可能となり、従来よりも大規模な省エネに貢献しました。
導入された製品機器:
- WISE-4010:4-ch電流入力と4-chデジタル出力のIoTイーサネットI/Oモジュール
- ECU-1251:2×LAN、4×COMポート搭載 TI Cortex A8 産業用通信ゲートウェイ
- ECU-4784:IEC-61850-3認定パワーオートメーションコンピュータ
- HPC-7242:4×ホットスワップSAS/SATA HDDトレイ および RPS 搭載 ATXマザーボード用2Uラックマウントシャーシ
- WISE-PaaS/EnSaaS:エッジからクラウドサービスへの産業用PaaSソリューション
- WISE-PaaS/WISE.M+:クラウド対応の産業用IoTリアルタイム監視・運用プラットフォーム
- WebAccess/SCADA:ブラウザベースのSCADAソフトウェアプラットフォーム
システム構成図
結論
HISGやソーラーパネルのような再生可能エネルギー発電を目的とした機器には、クラウド環境で運転データを表示できる遠隔監視システム(リモートモニタリングシステム)が不可欠です。これにより、オペレータ側は発電した機器が適切に機能しているかどうかをタイムリーに確認し、電力使用量やコスト削減につなげる事ができます。 アドバンテックのユーザーフレンドリーですぐに使えるソリューションを活用して、ICP社はモニタリングシステムの開発タイムラインを短縮することができました。このシステムを使用して、楊教授のチームは、何千キロも離れた場所で省エネ建材をテストし、それらがどのように機能するかを実証しました。市場投入までの期間が非常に短いこのモニタリングシステム社は、IPCの顧客が導入を検討するであろう太陽エネルギーソリューションのリストのトップになりました。